気になる女

その女は一言でいえばバカだった。それを上回る明るさ、外見の良さがあったとはいえ、自分にとってはどうでもいい女の1人だった。
そんな彼女は体育祭でいわゆる応援団長を自ら志願してすることになった。帰宅部で暇な俺はパネルの手伝いをやっていた。ちなみにパネルの原画を書いた子は東京に通って美術を勉強しつつ、おじさんともヤッているような猛者だった(何)そしてパネルが完成してグラウンドに飾られた時、ダンスの練習の合間を縫って見に来たその女に感謝の言葉を言われた。その時俺は彼女の眼を見ることはなかったけれど。
そして3月、卒業式前日。俺はその女と話していた。明日来る気になれないかもしれないと。受験を終えて初めての登校日、勉強以外に何もない俺は周りの空気のなかに身を置くのが辛かった。競い合ったあいつも、勉強を教えていたまた別の女も、口を聞いたことのないような奴も。笑顔が自分を嘲笑しているかのように見えた。それでもその女は自分にちゃんと卒業式に来てよ、と言った。翌日、俺のスーツは部屋のハンガーに掛かったままだった。
1年経ち、俺が人生を放棄して働き始めていた頃、その女の名前を見る機会があった。予備校のチラシだ。彼女は勉強を続けて、夢をつかんだ。「私バカだけど。」そう言いながらも、また挑戦すると言っていた彼女を忘れることはできない。なぜ自分は目標を捨てたのだろう?何が嫌になったのだろう?


今まで自分が会って影響を受けた何人かの他の女と同様、彼女と会うことは二度とないと思う。でも俺は彼女みたいなバカに憧れる。もっと人生を楽しんで、かつ苦労をすればよかったと思う。自分の性格がもどかしくて、イライラする。自分の性格を殺せるなら殺したいね。