変な女

小学校から高校まで一緒だった女がいた。一言でいえば変な女。しかし、頼りがいのある女。
俺があんな奴になれたらなー、と言うと「そんなに冷たくなれないくせに」とずばり当てられる。そのころの俺は波風立てないように、誰に対しても良い顔する自分が嫌いだった(今も少し)。そういう態度を取るのが自分の本心なのか、演技なのかはよく分からない。あの女はどういうつもりでそう言ったのだろうか。
その女は自分がフラレタ子とも仲が良かった。中学の時だったと思うが、その女から「アンタ鈍いね」と言われた。その一言を聞いても俺の不安が自信に変わることはなかった。まごまごしているうちに彼女は他人のものになった。そのことで俺は自分自身と、そして何故か彼女への憎悪を募らせている。自分に自信がない弱さの裏打ちともいえるだろうか。
スキー旅行という名の雪の監獄に閉じ込められる行事の行きのバスで、その変な女は俺の隣に座った。俺は好きな子について聞いてみた。なぜ彼女は学校にいないのかと。その女は理由は知らないようだった。その時俺は彼女が好きだということを話してみようかと思った。が、止めた。ずっと黙って考え込んでいた。一番頼りになる相手のはずだが、上手く切り出せなかった。
夜になって他の男たちと部屋で話をしていた。きっかけは分からないけど、どんな女が気になるか、という話が出てきた。そういう話題は苦手というか、そんな話をするのも初めてだったので、適当に女子の名前をあげてみた。それが的外れじゃなくてホッとしたのを覚えている。その後、ある男が名前をあげた女子の部屋に言ってみっちり怒られていたけれど。しかしその2人は付き合い始めた。なんでそんな行動力があるのだろう?そしてどうしてそんなに軽いのだろう?自分には理解できなかった。

高校を出てその変な女とも別れ、数か月。再びその女を目にした。一方は人生見失いがちの浪人生、もう一方は地元に帰って免許を取ろうとしている身だ。俺は見つけるたび目をそらし、一言も話さなかった。もし話しかけていたらどうなっただろうか。俺はまたやる気を取り戻しただろうか。頼りになるあいつは、カンフル剤としてもぴったりの人物だったと思う。一番信頼できる女友達と言っても過言ではない。少しだけ、また会って話してみたいと思っている。情けない姿をさらすの覚悟でね。