もう一つ

中村真衣〜挫折と転機〜
結果は良くはなかった。しかし良かったのかもしれない。彼女の顔には私は充実感をうかがうことが出来た。

シドニーオリンピック銀メダリスト、中村真衣。背泳ぎで世界の舞台へ飛び立った中村。表彰台での笑顔は素晴らしい物があった。
しかし、その後は苦難が続く。極めつけにはアテネオリンピックの出場権を逃してしまった。彼女はこのとき何を思ったのだろうか。
アテネでの熱い夏が始まった。彼女はテレビから選手たちを見つめていた。引退も考えていたという。
そんな時、一つの転機が訪れる。新潟県中越地震。彼女の家も被害を受けた。その苦しい状況の中から彼女が感じたものは泳げる喜びであった。
そして彼女は再び戻ってきた。50メートルにしぼって、世界水泳への出場権を獲得した。
モントリオールでの本番、彼女は決勝まで進んだ。そして決勝――――順位は4位だった。結果として満足行く物ではなかったかもしれない。しかし彼女には世界で泳げたという充実感が感じられた。

26歳。チーム最年長で臨んだこの大会。今後はどうなるかは未定という。同世代の選手は引退していった。それでも彼女の強い意志―――自らを引き上げた精神力は素晴らしいものがあった。